第34話

千里が勝手に言い出したことだから別に無視しても良かったんだけど、気が変わった。




んだよてめぇら。私が単なる喧嘩馬鹿にしか見えねぇってのか?こないださりげなく家庭的な部分見せてやったっつーのにまだそんなイメージなのかよ私。




料理くらい簡単なもんなら作れんだよ私だって。伊達に竜と二人暮らししてねぇっての。




極稀に台所に立たせてくれるからな。おかげで多少は作れるようになったんだよ。





「おい千里。気が変わった。キッチンまで案内しろ」




「あはは……いーよ」





私のブラックオーラに口元がひきつりつつもキッチンまでちゃんと案内してくれた千里。




珍しいこともあるもんだな。いっつも何があっても我関せずを貫くこいつが、自ら他人に関わろうとするなんて。




キッチンについてからじぃっと千里に視線を送っていると、それに気づいた千里は嘘臭い笑みを浮かべる。私からブラックオーラが消えたからか怯えた様子はなかった。





「どしたのー華ちゃん。俺に見とれちゃって」




「誰が見とれるか。……お前、他人と距離とってんじゃねーのかよ」





ぽつりと呟くように吐き出した言葉に軽く首を傾げる千里。だがすぐに何かに納得したような顔をしてへらりと笑う。

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