第11話

本日何度目か分からない舌打ちをかましたあと、不機嫌を隠そうともせず開き直ってやった。





「ああそうだよ。全教科一桁だよ。笑うなら笑え。そのあとあの世の花畑見せてやるけど」





「ひっ……!?」と怯えた顔で私から遠ざかる弦。そんな凶悪面なのに女子高生にビビってどうすんだ。




一方の竜はポカンとアホ面を引っ提げている。殴っていいか。




もういい。笑われるのは覚悟しよう。そうやって心の中で密かに覚悟を決めていると、突然頭を撫でられた。





「ちょ、なっ………!?」





わしゃわしゃと力強く、でもとても優しい手付きで撫でられている。




意味が分からず私の頭に伸びる手の主を見ると、とても優しい笑みを浮かべていた。




決して馬鹿にするような笑顔ではない。とても柔らかく、嬉しそうな笑顔。





「たくさん頑張ったんだねぇ。えらいえらい」





そのあともしばらく撫でられた。






…………なんだよ、それ。




余裕で赤点だし。努力不足だし。普通ならもっと頑張れとか、馬鹿にしたりするとこだろ。




それなのに、さ。




そんな優しい顔して頭撫でんなよ。





「…………ガキ扱いすんなっての。てか、仕事しろ」





なんだかむず痒くなってべしっと竜の手を払いのけてそっぽを向く。




竜は「うーやだよぅー」とか言いながらきちんと仕事をこなしている。なんだかんだ言っても最終的にはちゃんとやるからな、こいつ。




………なんだろう。なんか、上手く言えないけど……胸の中がじわりと熱くなっていく。





「……竜のくせに、いきなり大人ぶるなよ」





普段なよっとしてるくせにさ。ふとしたときにあんな大人の笑みを向けるなんて反則だろ。




なんか照れくさい。





「ん?華ちゃん、なんか言ったか?」




「なんでもない」





そう弦に誤魔化して、竜の仕事が粗方終わったころに二人と別れて倉庫に向かった。

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