第10話

「ところで華、テストどうだった?」





竜のその言葉でピキッと空気が凍った。




人がせっかく忘れてたことを……





「華すっごい勉強頑張ってたもんねぇ。ねぇねぇどうだったの?」




「あっ、馬鹿…………!」





弦は青ざめて竜の口を塞ごうとする。




このヤロウ。今最も聞きたくない単語を発するんじゃねぇよ。潰すぞコラ。





弦は私のクラスの担任だから当然私のテストの点も知っているはずだ。




だからこそあの反応なんだろう。うん、間違ってない。今すぐその馬鹿の息の根止めてやれ。私が許す。




そんな物騒なことを考えるくらいには八つ当たりする。





「……その口閉じろ。竜」




「えっ!?何その冷たい反応!?」




「うるせぇ。今はテストだのなんだの聞きたくねぇんだよ」




「あ、もしかして1点も取れなかった?残念だねー。次ガンバレ!」




「………………」




「華ちゃんストップ!!手バキボキ鳴らしながら竜に近付かない!!」





チッ。弦に止められた。





「んだよ。止めんなよ」




「そりゃ止めるよ!普通なら有り得ない音で手ぇ鳴らすの聞いてたら止めたくもなるよ!!」




「………チッ」




「華ちゃんの舌打ちが妙に恐怖を感じるのは何故だろう」




「ちょっと弦ー!いきなり口塞ごうとしないでよー」




「お前は黙ってろ!華ちゃんはこれでも頑張ったんだ!全教科一桁の点でも十分頑張ったんだよ!!」




「フォローしてんのか貶してんのか判断に迷うな。一発殴らせろ」




「華ちゃんその拳下ろそうか」





当然機嫌は急降下した。

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