第9話

「う……うわぁ……マジか。マジで華ちゃん不良になったのか……」




「なったんじゃなくて元からこんなだよ」





そんなしみじみと言うな。こっちまでなんとも言えない気持ちになる。




弦が眉尻を下げて複雑そうに表情を歪める。内心びくりとした。




心配してるような、どこか呆れたような顔。だがいかんせん、相手は泣く子も黙るヤーさん顔の弦だ。右目の眼帯がそれに拍車をかけてる。なので、慣れた今でもどんな表情も少しばかり恐怖を感じてしまう。




心配してくれてるのはひしひし伝わってるから顔には出さないけど。





「やっぱあれか?喧嘩とかすんのか?」




「んなもん日常茶飯事だよ」




「華ちゃんが別次元の人に見える……なんか怖い」





鏡見てものを言え。




とは言えず、じろりと弦を睨むように見るだけに留めた。私の視線にびくっと肩を揺らして頭の上にハテナを浮かべてる。




それさえも恐怖を抱けるほどに彼の顔は凶悪なのだ。




どんな顔しても怖いってすごいと思う。




これこそまさに顔面凶器。





何気に酷いことを考えてる私のことなど知らず、私の視線に首を傾げながらも変態イトコの仕事を手伝ってあげてる心優しい青年。顔怖いけど。




どれだけ顔が怖くてもその根っこの部分は昔から変わらないなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る