少し乱暴にシャツのボタンを外し、はだけた鎖骨の上に唇を移動する。


「そこ、…嫌っ…」

「嫌、じゃないだろ?…声、甘くなった」

「…っ」


 俺は片方の肩を掴んで動けないようにしてから、本格的に鎖骨を可愛がってやる。

 文親の身体に俺の体を重ねるようにして、強弱をつけてそこだけを責めると。

 俺の身体の下で彼が震えてくるのが分かる。


「…いいみたいだな」

「や…だ…っ」

「うーそっ。反応良いじゃん?」


 まだ、二人とも、着衣のままなのに。


「痛てっ!…また殴ったっ!」


 今度は後頭部。

 俺の下では文親が耳まで赤くして、怒りモード全開になっている。

 逃れようとして反らす喉に俺はくちびるを寄せて。


「逆効果」


 今度は片方の手もベッドに抑え付けてささやけば。


「…つや、…龍哉っ」


 声が、途中から半泣きになる。


「…やめて…」

「やめない」


 言って。喉元の位置から文親を見上げてやる。

 ガキの頃から嫌われ続けた三白眼だが、どうやら文親はしてる時の俺のこの眼に弱いらしい。

 文親の身体から力が抜けるのが分かる。

 それを良いことに俺は彼への悪戯を続ける。

 片方の肩を掴んでいた手を離しても、もう文親は抵抗しない。


 自由になった腕を伸ばし、指先を俺の髪の中に遊ばせる文親は苦し気だが、快感が上回ってきているのか、軽く眼を閉じて甘い吐息が零れて。その風情が恐ろしいほどに美しい。反った喉元とまなじりに浮かぶ涙。


「泣かないで…悪かったよ」


 俺の腕の中で泣くあんたが凄く綺麗だから、こうやって会って、抱き合う逢瀬おうせの時に、いつもちょっと意地悪しちゃうんだよな、とはいちいちもう、言わないけれど。


 言ったところで、仕方がない。

 夢中になったなら、やめてやれないのだから。


 そのまま、行為は進み。

 やがて、終わる。


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