第83話

『黒薔薇姫』




その名は、私のかつての異名。



久しく聞いてなかったが、もうこっちにまで噂が出回ったか。




「なんで辞めちまったんだろーな?」



「俺が知るかよ。…憧れてたのになぁ。伝説の女総長」



「12才で黒華を作って1年も経たないうちに全国トップにのしあがった絶世の美少女だもんな。一目見たかったー!」



「今どこにいんだろ?もしかしたら会えっかな?」



「ばーか。黒華の拠点からは離れすぎてるから、そうそう会えねぇよ」




通り過ぎても尚聞こえてくる不良達の会話に耳をすませた。



自分のことのはずなのに、他人事みたいに聞こえる。




もう黒華の総長じゃないからか、




自分の異名をあまり聞かないからか、




わからないけど……









でも、ほんの少しだけ懐かしさと寂しさが込み上げてきた。

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