第82話

どうにか弦を宥めたあと、いつも通り真っ直ぐ帰路につく。





以前の私なら廃ビルとか裏路地とか人気のない場所に行って意味もなくぶらついてたが、今はそんなことしていない。




今は帰る家がある。




帰りを待っててくれる人がいる。





それだけで心が温かくなる。だからもうあんな意味もなく夜道をフラフラと歩いて夜を明かすことはしない。竜が心配するからね。





最近は、帰る家があるって良いなぁって思うようになった。これも竜のおかげだな。






しみじみ思いながらいつもと同じ道を歩いていると、端の方に不良が屯しているのが視界に入った。




見慣れたカラフルな頭なので特に気にもしないで素通りしようとしたとき、懐かしい単語が聞こえてきた。







「黒薔薇姫、黒華抜けたって噂本当かな」

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