第62話

「たっだいまー!」




「おかえりー竜」




「ただいまのぎゅーっ」




「せんでいい」





若干変態っぽい顔で抱きつこうとしてくる竜の顔に拳を一発入れる。





「ぐすん。華ちゃんが俺の愛を受け入れてくれない……」




「気持ち悪いこと言うな馬鹿。私は風呂入ったぞ。さっさと竜も風呂入ってこい。そのあと飯な」





晩飯の下ごしらえをしながら話していると、竜が包丁を持つ手をそっと止めた。





「華、元気ない。……なにかあった?」





その問いかけに私は無言を決めていた。





やがて口を開く。







「何が?私はいつも通りだよ」





いつもとなんら変わりない笑顔を見せて言うと、「気のせいかなぁ」と首をかしげる竜。





こうやって嘘を重ねていくんだよな。






竜はそれ以上なにも聞いてこなかった。

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