第61話

幸い、私の存在に気付いていないらしく、焦ってるようにバイクを走らせていた。



この場を離れないと。捺に見つかったら厄介だ。




建物と建物の隙間にすっぽりはまってやり過ごす。





捺を乗せたバイクはどんどん距離ができて、次第に見えなくなった。



ホッとしたと同時にズキンと胸に痛みが走る。




まだ、あれから一ヶ月くらいしか経ってないもんな。




心の傷が癒えるには短すぎる時間だ。



皆も……私を探してるのかな。



そうだと嬉しい。


そうだと……悲しい。



私の心は、自分でもわからなくなるくらいぐちゃぐちゃになっていく。

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