第60話

「さて、そろそろ帰ろう」





感傷に浸っていたら結構な時間が過ぎていた。早めに帰らないと竜になに言われるかわからないからな。あの馬鹿多分残業しないだろうし、早めに帰ってくるだろうからな。




茜色に染まっていく空を見上げる。





赤に、染まる瞬間は、あのときを、思い出す。






頭を左右に振ってそれを考えないように歩き出した。





と、そのとき。






もう二度と会うつもりはなかった人物の声が聞こえてきた。










「華っ!」








その声が聞こえた瞬間、竜の言ってたことを思い出した。






なんでもっと早くに思い出さないんだ、私の馬鹿。












捺が、私の名前を必死に叫んでいるのを見てしまった。

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