第58話
「倉庫に来い」
主語がなく、私にはなんの意味が含まれてるか分からないその単語を聞いた奏は少しずつ表情を歪めた。
「えー?「我狼」との決着はまだ先でしょー?僕華とマフィン買いに行くー!」
「…………奏」
ほんの少し眉を潜めて鋭い眼差しを送る幸に、奏はふぅっとため息を吐いた。
これが無言の威圧というものか……
「……わーかったよ。行けば良いんでしょ、行けば。てなわけでごめん、華。マフィン買いに行くのまた今度ね」
申し訳ない、と眉尻を下げて両手を合わせる奏。
「用事があるんでしょ?ならそっち優先しなよ」
「うん……じゃあまた明日ねー」
残念そうに肩を落としている。そんなにマフィン食べたかったのかな。
ま、用事があるなら仕方ない。私も少し街をぶらついてから帰ろう。竜にもああ言っちゃった手前、真っ直ぐ帰るのは躊躇ってしまう。
幸い昔と街並みは変わってないから、迷子にはならないはずだ。
幸と奏に手を振って歩き出した。
そのときの私は、捺が私を探しにこっちに来ていることを忘れてしまっていた。
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