第55話
私が何を言っても話すら聞かなかった男どもが、一斉に道を開けた。
「………………“金狼”だ……」
ぽつり、と誰かが呟いた。
開かれた廊下を悠然と歩き、私達に近付いてくる幸。
「散れ」
そう声を出した幸に、周りのやつらは狼狽えながらもバタバタと去っていく。
金色の髪に、鋭い眼光。
言うことを聞かなければ逃さないと物語っている瞳に、誰もが畏怖しているのが見てとれた。
その姿は、確かに金色の狼のようだった。
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