第35話

竜も相変わらずだな。




事情を何も説明してないのに、私のお願いを叶えちゃうとこがさ。




普通彼女でもない女を家に住まわせないでしょ。




高校の学費も出してくれないでしょ。





私が族のトップだったこと以外、なんにも説明しなかったのに。




またあのころのように太陽のような笑顔で全てを包み込んでくれるんだ。





その優しさはとても嬉しい。




でも、いつかはちゃんと説明しないと。





私が竜のところに来た理由を。




族を抜けた理由を。









いつまでも竜の優しさに漬け込むのはダメだ。





いつか、必ず、“そのとき“は来るから。








「華」




「ん?何?」




「華になにがあったか聞くつもりはない。言いたくなったら言えばいい。華は華の好きなように生きれば良い。……けど、自分を壊すようなことだけはしないでね」





私の目を真っ直ぐ見つめて真剣に話す竜に、ふっと笑みがこぼれた。





ごめんね、竜。








私はとっくに、壊れたよ。

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