第5話

私はふっと笑った。





「…………そっか」





今にも倒れそうな彼を心配そうに見つめるやつらが視界に入った。すでに倒れていてもう立てないのだろう。




…………なるほど。あれが守りたいもの、ね。





「私もあるよ。大切なモノ。もう壊れないように、大切に大切にしてるもの」




私が一度壊してしまったもの。今度こそ守り抜くと決めたもの。




「お前の大切なモノを壊したやつは、誰?」




「……………」




誰とは言わなかった彼だが、視線で訴えていた。





視線の先を辿ると、それは最近「黒華」に入ったばかりのやつだった。





私は目の前の彼を無視してそいつのもとへと歩きだす。

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