第10話

家に着いたわたしはまっすぐ自分の部屋へ向かった。


1か月半という期間は、わたしにとっては正直短く感じられたけど、それでも暫くの間学校に行かなくて済むと思うとほっとする。


階段を一段ずつ上がる度、緊張感が解けていくのを感じた。




部屋に入ったわたしはすぐに部屋着に着替えた。





こんな制服、二度と着たくない----------





それでも夏が終わる頃にはきっと、袖を通さなければならないだろう。

ならせめて、その間は少しでも見なくて済むようにと、クローゼットの奥にぐっと押し込んだ。


その時、ドアの向こうからお母さんの声が聞こえてきた。



「灯(あかり)、入るわよ」



ドアが開くと、お母さんは大きな旅行鞄を2つ持ちながら立っていた。

我が家は旅行なんて滅多に行かないから、わたしは不思議に思って尋ねる。



「どこか出かけるの?」


「何言ってるのよ。明日からおじいさんの家に行くって言ったじゃない」


「えっ!?」


「だから早く荷物まとめちゃいなさい」


「お母さん、わたし聞いてないよ。そんな話いつ決まったの?」


「1週間くらい前にお父さんが急に言い出して・・・。お母さんもいろいろ忙しかったから伝えるの忘れたのね、ごめんなさい」


「で、でも、そんな急に・・・困るよ。宿題だってあるし」


「宿題は持って行って向こうでも出来るでしょ。それにあっちはここより静かだし。近くに図書館もあるからきっと勉強もはかどるわ」


「・・・でも」


「いいから----------」

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