第53話

新婚……生活……?


「綺っ、こぼれる、」


「えっ、あ!」


アタシが持っているコップは斜めに傾いていた。

若月君に言われなければテーブルはビールで水浸しだった。


「大丈夫?」


彼は普通に言う。


それが何だか気に食わなかった。


「若月君が可笑しな事言うから!」


焦るアタシを見て彼は俯いて薄く笑った。


もう自分の心の行き場がなくて溜息が出た。


「あ、溜息とか失礼だよね。」


「アタシで遊ばないで。」


「遊んでないよ。好意を持ってるって言ってよ。で、あの渓人って彼と俺どうするの?」


「は?」


ここで若月君が渓人を出してくるとは予想外だった。

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