Hit Me

第54話

「どうして渓人が……、」


そう言うと若月君は不思議そうな表情をした。


「……どうしてってあのヒト彼だよね?」


「う、うん。そうなんだけど……、」


「そうなんだけど?」


「え、えと、そう。」


歯切れの悪いアタシを若月君はずっと見ていた。



アタシは迷っていた。


このまま渓人が彼氏だとしらを切るか。


でもそれは渓人に対して迷惑な話。いつ彎曲して本当の彼女に知られたりでもしたら確実にアタシと渓人との友情は壊れる。


そんな事を必死で頭の中で考える。


視線を上げると若月君は、


「彼とか嘘でしょ。」


……バレてた。

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