第50話

柏木さんがそう言って少し時間が経った頃、インターホンが鳴った。


「そろそろ来ると思ってた。」


「え?」


柏木さんは立ち上がるとリビングに向かいバッグを肩に掛ける。


「え、あの、何処かに出掛けるんですか?」


「そうなの。」


「じゃあアタシも、」


そう言って隣の椅子に置いていた自分のバッグに手を掛けようとした。


だけどそれは彼女によって制止する。


「宇川さんは此処にいて良いの。まだこんなに料理が余ってるんだから。あのインターホンは運転手さんだからもう行くわね、今から打ち合わせなの。鍵は管理人に言ってね。」


そう言って玄関の方へ行ってしまった。


アタシは半ば放心状態だった。


だってこんな遅い時間から打ち合わせ?

それならこんなに料理を作ってアタシを呼ぶとか変じゃない?

それも話は何故か若月君の事だし。


アタシは腑に落ちない感じでビールの入ったコップに口をつけた。

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