第45話

アタシにキスを落とした若月君はアタシに何か言って帰って行ったけれど……。


覚えていない。


心臓の音がうるさすぎて。


耳も脈打って聞き取れなかった。


ううん、


彼が耳元で囁くからゾクゾク……した。


あの瞬間、アタシの身体は若月君に支配されてしまった。


また16歳のあの時のように彼にときめいている。そんな言葉はもう頭を過らないと思っていたけれど。


帰りの電車に乗ろうとした時着信音が鳴る。


主は、


柏木さんだった。

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