第43話

「……若月君、」


アタシは俯いたまま彼の名を呼ぶ。


「うん……?」


アタシは最後の気持ちを彼に伝えようとした。


その時、


ドアをノックする音が聞こえた。


アタシも若月君もその音に驚く。



「綺?まだいるのか?そろそろ出てこないと主任が探してるぞ。」


ドア一枚向こうには渓人がいた。


思わずドアノブに手を掛けようとしたけれど腕を掴まれていて無理だった。


アタシは顔を上げる。


「綺?……あれ、いないのかな。」


声を出そうとした瞬間――――、


若月君の唇とアタシのそれは重なった。

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