甘い生活

第42話

――――……


若月君とこんな至近距離なんて心臓がもたない!!


視線なんて合わせられるはずもなくアタシは思わず俯いた。



だけど掴まれた腕はジリジリと痛い。


「綺、君も俺を好きだった?」


彼の静かな声音が頭の上から優しく降ってくるように感じた。


確実に、


アタシの場合は“好きだった”ではなく、


“好き”……なんだけど。


だけど、もうそんな事を言っても何も進む事はない。


若月君は最後までアタシを騙す。


それでいい。


過去の気持ちなんてどうにでも言える。


そこまでしてアタシには良い人間で映っていたいのか謎だけど……。


……でも、


最後にアタシの気持ちだけは言ってしまってもイイかな、と思ってしまった。


彼の担当だけど他部署のスタッフに任せたから会う事なんてないだろうし。

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