第41話

涙が落ちそうだった。


でもここで泣くわけにはいかない。


泣いてもどうにもならない……。


アタシは立ち上がる。


アタシを見ていた若月君も急いで立つ。


「綺、」


そしてこの前みたいに不意にアタシに触れる。


だから、


余計に泣きたくなった。


アタシの身体に彼の感触を残したくない。


残してほしくない……。


「綺は勘違いしてるんじゃないの?」


「えっ……、」


アタシは慌てて彼の手から少し逃げた。


「アタシ……仕事に戻るね、」


後ずさりをしてドアの方へ向かった。


ドアノブに手を掛けた瞬間、


「俺は綺を好きだったよ。」


アタシの身体は反転して若月君と向かい合う形になってしまった。


そしてまた彼は簡単にアタシに触れる。


さっきと違うのは……力が強くて掴まれた両腕に痛みが走った。

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