第36話

――――……


「……ごめんね、うち社内カフェなくて。」


アタシは自販機にあるコーヒーを若月君の前のテーブルに置いた。


「別になんでも良いけど。」


そう言った彼にアタシは苦笑いした。


此処は談話室。

アタシと若月君が此処にいる事は渓人しか知らない。


上司にバレたらどんな変な噂を立てられるやら……。

お客様にはちゃんとしたコーヒーを淹れるんだけど、彼の場合はもう帰った事になっていた。


「綺、彼氏と職場のデスクまで同じなの?」


「え、あ……まあ、うん。」


なんとも中途半端な返事。


「ふうん、」


まともに若月君とこうして話すのは何週間ぶりだった。

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