第34話
一時間ほどして会議室のドアが開く。
先に出てきたのは若月君だった。
彼は書類を片手にスタッフと挨拶を交わす。
アタシはそんな姿をガラス一枚で区切られているフロアから見ていた。
「お、若月さん来てたんだ?」
外から戻ってきた渓人が彼を見つける。
「うん、あの様子だと順調みたいね。」
そう言うとアタシは手元の仕事に取り掛かる。
「……綺、あれから何か進展あった?」
「進展?何の。」
「若月さんとだよ。」
「な、何言ってんのそんな関係じゃないから。」
アタシは渓人と視線を合わすことなくパソコンのディスプレイを見つめた。
「……綺、お前は今でも若月さんが好きか?」
もう、渓人はいつまでそんな話を続けるつもりなんだろう。
「ちょっと、渓人しつこいよ。そんなわけないじゃない。」
アタシは一点を見つめる渓人を見上げる。
「……そうか、でもそれはお前だけかもしれないな。」
「渓人?」
渓人は無言でアタシに合図する。
アタシはそちらに視線を向けた。
「若月さんの俺を見る目は何か殺気を感じる。」
スタッフと話しているとばかり思っていた若月君は確かに渓人を見ていた。
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