第25話
――――……
「一人で帰れるか?」
「大丈夫よ~、渓人が帰りを心配するなんて一度もなかったのに。」
お店を出ると思いの外肌寒いと感じた。
「お前、結構飲んでたからさ。」
「何よ、呑めって言ったの渓人じゃん。」
「そうだけどさ……、」
渓人は俯いて頭を掻いた。
「さ、本当の彼女の所へ行って。アタシはそこのタクシーに乗って帰るから。」
渓人には同じ会社に二つ年上の彼女がいる。彼女とは一年付き合っていて、最近は結婚の話が出ていると渓人から聞いていた。
「そうか、じゃあまたな。」
渓人は左手で合図すると駅に向かって行った。
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