第16話

「10年経ってやっと話せたのにね、そういうのって淋しくない?」


目の前の彼はそう言ってアタシを見た。



今、過去を出されるのはアタシの本意ではない。


アタシが返答せずにいると、



「綺にとったら俺はそんなに思い出したくない存在?」



「……それは、」


アタシはスカートの裾を強く握る。


緊張してるのか身体が汗ばむ。


彼は、


アタシとの過去をそんなに重要視していないのかもしれない。


だから……普通に接する事が出来るのだと思う。



「若月さんは、仕事線上の方なので……、」



「じゃあ、俺がさん付禁止って言ったら止めてくれるの?」



「え、」



若月さんは意地悪そうに微笑んだ。

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