第10話

「ほら、好きなヤツ選べよ」



「え?」




男の目の前にあったのは、さっき水を買った自販機の前だった。




「奢ってやる。

こう言うのはしっかりしねぇとイケねぇみてぇだからな。


それに、借しにして帰すのも俺もあんましたくねぇ」



「……あ、ありがとう」




──びっくりした!


なんかどっかで聞いたことあるような気がしたから!



そんな訳ないよね!?



私が前に言ったことを真似してるなんて……!?




「最近は少し変わった奴がいるんだな。」



「……それって、私のこと?」




目に止まったミルクティーを押すと、ゴトンッと缶が落ちた。




「あぁ。それともう一人な」



「他にいるなら、私のことは否定して欲しかった……。


て言うか、女の子に変わった奴って言うと、少しイラっとするから気をつけなよ」




私はそう言って軽く睨みつけると、男は気分を害することなく、クスクス笑いながら「そりゃぁ、悪かった」と謝った。



すると、ゴトンッと今度はコーヒーが落ちてくる。




「あ、それ取ってくれ」



「ねぇ、それは感謝する奴のすること?」



「してもいいだろ?」



「良いわけない!ホラッ!」




私は怒りながら、拾ったコーヒー缶を勢いよく差し出した。




「プッ。良いんじゃん」




良いわけあるか……!



──って、言ってやりたい。



けどこんなことで喧嘩するのはちょっとバカらしいし、もっと違う話しをしてたいから、言わないで置こう。

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