第9話

「……お前、女だったのか」



「ッ……!?」




性別を当てられたことに、しゃがんでいた私は後ろに倒れてしりもちをついた。




「わざと声低くしてたのか?」



「べ、別にそんなんじゃない」




うわぁぁ!


バカみたい!!



そりゃ顔近づければ、誰だって分かるよね!?


油断したー!


せっかく誤魔化してたのに、バカみたいじゃん。




「もう少しで終わるから待ってろ」



「あぁ……。ありがとな」




男はそれから特に何も言わずに、大人しく手当てをされていた。



手当てって言うほどでもないんだけどね……。


でも、しないよりはマシでしょ。




「よし……。出来たぞ」



「あぁ、ありがとな」




ドキッ──




なッ……!?


ま、満面の笑みで言うなんて反則でしょ!?




ボソリ「かっこよすぎ……」



「プッ。聞こえてっし」




うわぁぁ。


またドキドキ心臓がうるさくなってきた。


脈拍が上がってきてるよ。




「さて──」




そう言った後、男は立ち上がり「来いよ」と笑った。




「お、起きて平気なの!?」




あ、思わず素が出ちゃった……。




「フッ、このくらい平気だ。


服が汚れてるだけで、傷はそんなにねぇし。疲れたから休んでただけだからな」




はぁーー!



やっぱり喧嘩なれしてる奴って身体つきが違うのかな?




「……強いなぁ」



「まぁな。つか、その様子だと知らねぇみたいだな」



「何を?」



「俺の正体ッつーの?


俺、『神鬼』って言う暴走族の総長なんだわ」



「神鬼……。──え!?」



「あぁ、神鬼は知ってんのか。因みに通り名は『帝王』な」



「……うわぁ。

近寄るなって言われた人だったんだぁー」



「ぶはッ……!お前、面と向かって言うことかよ。

面白い奴だな。


まぁ安心しろよ。助けてもらってとって喰おうなんて思ってねぇから」



「それはどうも」

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