第4話

「えっと……」




何かないかな──




「ハァ……。


礼なんていらねぇよ。いいからとっととあっち行け!」




そう言って、細道を指差す男の人に私は首を横に振った。




「嫌です!こう言うのはしっかりしておかないと。

……あ、コレ!これあげます!」




これならと思って取り出したのは、ハンドクリーム。



男なのに手が乾燥しているのを見て、コレが良いと思った。


よく見たら、あかぎれ起こしてるし。




「あ?何だこれ……」



「ハンドクリームです。

助けて頂いて本当にありがとうございました。では失礼します」




うん、コレでやっと落ち着くな。


さっきから心臓の音がうるさすぎるんだよね。




「……お、おう」




呆気に取られていた男に私は頭を下げて横を通り過ぎると、ふと腕を掴まれた。




ドキッ──




「お前って、まさか……」



「え……?」




うわぁ、どうしよう!


ホントに心臓が可笑しくなる……!



て、手が熱いよ!




「あ、イヤ……。何でもねぇ」




そう言って男は手を離すと、顔を赤くしながら頭を掻いていた。



か、カワイイ……。


こんなにカッコイイ人も、こんな顔するんだなぁ。




「……気をつけて帰れよ」



「あ、はい……。ありがとうございます」




そう言って走り去った私は、一度も振り返る事が出来ずに人気の多い道へ出ていた。

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