第3話

それはそれは、本当に一瞬のことで……。



さっきの流れを説明すると_


肩に腕を回していた男がいきなりガクリと倒れると、


今度はもう一人後ろにいた男の呻き声が聞こえ、


何かが横切ると、目の前に黒髪の後ろ姿が現れたってわけ。


そんで、最後の一人が何か言おうとして殴られたんだよね。



私が見た最後の人を倒すこの人の動きは無駄がなくて、手足の運びから何かまで綺麗に見えた。




「おい、女が一人でこの道を通るんじゃねぇ」




そう言って振り向いた男に息を呑む。




ボソリ「かっこいぃ……」




目や鼻や口のバランスが良い感じで、すごく整った顔立ちをしてる。


それに少し長めの黒髪は艶があって綺麗だし。



「絶世の美少女」成らぬ、


「絶世の美男子」って感じ……?



目元は鋭くてちょっと怖い印象があるけど、雰囲気あって大人の感じがする。




「──おい、話を聞け……!」



「ぁ──は、はいっ!」




なんだろドキドキしてきた。


顔が熱い……。




「女はあっちの道を使え。いいな?」



「あ、はい」



「なら早く行け。じゃぁな」



「ぁ……」




ど、どうしよう……。




「ま、待って……!」




なんでかな。


私、この人を引き止めたくて何か焦ってる?




「あぁ?」




えっと何か……



──あ!


私まだ礼をしてない……!




「──お、お礼をさせて下さい!」



「いらねぇ」



「え……」




──あ、そっか。


こんな風に言い寄る人が何人もいたのかも。


面倒くさい女って思われたかな……。



この人にとって、見知らない私を助けることは当たり前みたいな、日常のことなのかも知れない。



でも、私にとっては全然違うから、やっぱりお礼はしたい……。


これ以上警戒されないように、この場でお返し出来るものが良いよね。

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