第85話

「……夢みてた。」


「寝ようとしたらうなされてるからビックリしたんだけど。怖い夢でも見た?」


千秋君はそう言って顔にかかっている髪の毛をよける。

まだ寝惚けている感じがしていた。


怖い夢どころか目の前の彼と……。


「同じベッドで寝てるせいか夢に千秋君が出てきたよ。」


「え、そうなの?俺が夢に出てきてうなされるって、どう考えてもいい夢ではなさそうだね。」


そう言いながら千秋君は笑った。

そして私から離れようとした。


「……どこ行くの?」


「え、もう寝るから戻るよ。ライト消すよ?」


どのくらい自分が眠っていたのか分からないし、何時なのかも分からない。


現実なのにまるで夢の中にいるような感覚だった。


「待って、行かないで。」


私は千秋君の腕に触れた。

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