第75話

「だってあれから10年も経ったんだよ、大人にもなるよ……。」

私は俯いてそう言った。


「あの時は高校生だったから自分のことが精一杯だったんだよ。誰かのことなんて考える暇なんてなかった。」


「千秋君は私のこと暇人と思ってたの?」


「そうじゃなくて、……誰かを好きになって守れる責任とか考えられなかった。」


「……責任とか考えての?」


「子どもだったんだと思う。」


やっぱり千秋君は私より色んなことを考えていたんだ。


「……ねなのことは嫌いじゃなかったよ、どちらかというと好きだったんだと思う。」



「え……、」



「だけどもしあの時付き合っても自分自身に余裕がないから直ぐに別れてたと思う。ねなの方が先に嫌になってたんじゃないかな。」

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