第71話

「嫌じゃなかったら夕食作らせてもらっていいかな?」


「え、嫌というか助かるんだけど。」


私は千秋君にキッチンの使用許可を確認すると着ていたスーツのジャケットを脱いでリビングテーブルの椅子に置く。


「勝手にキッチン使われるのは好きじゃないでしょ?」


「そんな事思ったことないよ。だってこのキッチン使うのねなが初めてだし。」


さすがにその言葉に信用出来るわけないから納得したフリをする。


「ねなは今までの彼氏にこうやって食事作ったりしてた?」


「うん、凝ったものは作れないけれど。」


私はそう言いながら冷蔵庫の食材と睨めっこしていた。


「あ、そ……、」


千秋君の乾いた聞き取れないくらいの声がする。


さて、パスタでいいか。

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