君のこと 11

第61話

私は千秋君の事務所の前にいた。

ガラス張りの事務所だから見たくない光景も見えてしまう。


笑顔の千秋君とスーツを着た綺麗な女の人。

美男美女だ。

業者のヒトなのかな。


地鎮祭の案内を渡そうと来たんだけど……お邪魔みたい。

また明日渡せばいいか。

私は今来た道を引き返そうとした。


「ねな、」


後ろから千秋君の声がした。


「窓越しから見えたよ、用があって来たのに帰ろうとしてた?」


「あ……、先客が、」

いたから遠慮したんだけど。


「話は終わったから入って?」

千秋君はそう言うけど近くにいたその女性はちょっと驚いた顔をした。

そして彼は彼女に向かって、


「帰ってくれる?」


……怖っ。そんなあっさり言わなくても。

千秋君はその女性を促した。

彼女は私とすれ違う時お辞儀をする。

持っていた茶封筒は同業の会社名が入っていた。

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