第52話

「槇村、また大袈裟な……、」

涼子は笑っていた。

「塚原さんそろそろ呼ばれるんじゃないですか?上層部に。」



「塚原さんいるー?」


主任の声がフロアに響く。

「は、はいっ……、」

椅子から立ち上がると主任は私を見つけ近づく。


「千秋さんが来てる。君と話がしたいって。」


槇村君の言う通りになってしまった。


「担当を継続して欲しいって。千秋さんの言う意味も分かるよ、途中で外れるのは相手に失礼だと思う。それにうちとしてはもし千秋朔という建築家と契約切れるのはダメージが大きい。始めから気が合わなかった?」


「……いえ、そういう訳では。」


「塚原さんが千秋さんに失礼な事をしてしまったとしか言わないから仕方ないかな、とは思ってたんだけど相手は気にしていない、と言ってたよ?」



……私はかなり気にする。そして千秋君も気にして欲しい。

好きでもない私に触れたことを。

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