92・心地良いと〜野々目線〜

第92話

「俺に付き合って欲しいってどういう心境なんだ?」

「別に良いでしょ?気分転換したい気分なの」


悟と休みを合わせて街に出掛けに来てる。

どうして悟を誘ったかなんて自分でも分からないけどあの時、あの女が言った言葉が引っかかっていた。


〔どうして知らんぷりするんですか?〕

「知らんぷりなんかしてないわ」


私は佳彦が好きで悟とは友達の関係。


「野々?何をブツブツ言ってんだ?」

「わっ!!」


急に覗き込まれて後ろに下がったら転びそうになり恥ずかしい思いをする覚悟で居たのに痛みもこない。


「……?」

「危ねぇーな、野々。大丈夫か?」

「あっ…うん。ありがとう」


悟に抱き止められて力強い腕の感触にドキドキした。


「じゃあ、行くか」

「悟っ!」

「なんだ?野々?」

「手っ!手繋いで…」

「また転ばれると困るしな」


手を繋がれてしまい顔が赤くなるのが分かり何となく悔しいから悟を見たら悟の耳も真っ赤になっていた。


「プッ…」

「何笑ってんだ?野々」


なんだか可笑しくなってしまった。

佳彦と違う悟との距離が心地良いと思える事が出てくる。


「野々、何処に行くんだ?」

「あっ、あのね悟の好きな所で良いよ」

「ならさー」


悟に手を引かれて歩いて行き悟と笑いながら話して目的地に向かう。


「ここって…」

「久しぶりだろ?野々の好きな店」

「うん!ココに移転したんだね!」


私の好きな店を悟が連れて来てくれた。

店に入り座ったら女性二人が悟に声を掛ける。


「あれ?悟じゃん。女性連れ〜?」

「久しいな。元気していたか?」


そうだ!この男は佳彦同様モテる事を忘れていた。

私は、取り巻きの一人に過ぎない…って別に悟に好かれたって…。


「ごめんな、野々」

「別に」


謝らなくたって彼女・・じゃないし。

同期で私は佳彦が好きで……。


「何食べる?野々」

「うん。何しようかな…」

「俺、これが良いな」


メニューを指差す悟に「それね」って言って次のページを開き私はコレにすると指を差した。


「それにすると思った!」

「悟こそね!いつもそれ食べていたじゃないの」

「よく見てるなー。野々」

「別に。いつも同じのしか頼まないじゃないの!」


慌ててプイッと横を向いた。

この心地良い雰囲気がずっと続くといいなって思ってしまった。

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