89・補充しちゃう

第89話

「おはよう、華!!」

「おはよう、智子」


出社したら智子が青い顔して抱きついて来た。


「聞いたよ!昨日倒れんだって?」

「あっ、うん。でも大丈夫だよ」


会社の前で倒れちゃったから噂になるなっー…。


「ならいいけど気をつけてよ!」

「ありがとう。気をつけるよ」


赤ちゃんが居るって分かってからの仕事だから冷えには気をつけないと。


「……」


座っていて背中に視線が突き刺さる。

これは課長の視線だと思うから振り向いたらやはり目が合った。


「沢井さん、これの件なんですけど…」

「あっ、はい?どれかしら?」


慌てて声のする方に向いて集中する。

処理していてハッと気付く。


「!!営業周り行って来ます」


今日、営業だったのを忘れていて慌てて立ち上がって鞄に書類を入れて支度すると野山さんが来た。


「沢井さん、昨日倒れたって聞いたよ!大丈夫?」

「野山さん、はい。もうこの通り大丈夫です!」


笑って答えたら野山さんは一瞬考え込んで課長に言う。


「課長!今日の同行は高畑さん連れて行って良いですか?」

「高畑連れて行け。沢井は今日はオフィスで事務処理」

「えっ?えっ?」

「と言う訳で華ちゃんは今日はオフィスだよ?」


そう言って私を座らせた。


〈体調悪そうだから大人しくしてなね〉

「!!」


野山さんに小声で体調の件を突かれてドキッとした。

本当は吐き気がして何回も口を押さえていたのを見られていた?


「じゃ、課長!高田に連絡入れておいて下さい」

「今、入れる。玄関ロビーで待ち合わせな」

「はい」


野山さんに感謝しつつ私は事務処理に専念を出した。

そのお陰で吐き気が止まってくれてスムーズに午前中が終わった。


「沢井、この件で用事があるから第一会議室」

「あっ!はい」


課長に言われて慌てて立ち上がり課長の後を着いて行き第一会議室に入った途端に抱きしめられた。


「華っ!体調辛いんだろ?平気か?」

「課っ…!佳彦!大丈夫よっ」


少し震えている佳彦を安心させる様に抱きしめる。


「大丈夫だから。看護師さんに言われた“冷え”にも気をつけてるから」

「すぐ悪くなったら言えよ?すぐ駆けつける」

「うん。心配性だなぁー…」


クスクス笑って胸の中にギユッーと抱きつき押し当てた。


「華、キスしよ」

「…少しだけだよ?」


お互いの補助を求め合った。

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