87・着替えの一コマ

第87話

信じられない事が起こった。

私のお腹に赤ちゃんが居て嬉しそうに撫でる佳彦が居て、せわしなく動いてくれるお義母様が居て私はただ座ってるだけ。


「お義母様、ありがとうございます。鞄片付けて来ます」

「俺が片付けてくる。華はそのまま座ってろ」

「佳彦、着替えたいから」

「なら、俺も行くよ。転んだら大変だろ?」


ピッタリとくっついて行く佳彦に困惑しながら部屋に向かった。


「そう言えば引越し勝手にしたでしょ!」

「離婚してないんだから当たり前だろ!家電は捨てたけどな」


強引って言うか勝手ってなんだから…と思いながら部屋に入り鞄を所定の所に置き着替えようとしてフッと思った。


「転ばないからもう平気だけど?」

「着替えてる時に転んだら大変だろ?」


着替えって言っても下着姿になるのは勇気がいる。


「大丈夫だから!部屋から出て行って」

「お前の裸を何回も見てるから今更恥ずかしがる必要ないだろ?」

「恥ずかしいですっ!」


いくら何回も裸を見られても恥ずかしいものは恥ずかしい。


「佳彦君〜?ちよっと手伝って?」

「お義母様が呼んでるよっ!早く行かなくちゃ」

「なんだよ。今行くよー」


渋々佳彦が部屋から出て行く時に私の耳元で囁いて部屋から出て行った。


「せっかく華の体優しく触ってあげようと思ったのに」

「!!」


触る気満々だったじゃないの!

危なかったー!!と思いながら脱ぐ。下着姿になってから全身鏡が視界に入ったからお腹に視線が行く。


「…ここに佳彦との赤ちゃんがいるんだね」


まだなんの変哲も無いお腹の中に赤ちゃんが居る事に感慨深くなって来て涙が流れた。


「華〜?着替え終わったか?」

「!!佳彦!?まだ開けちゃダメ!」


佳彦は人の言葉無視して扉を開けて私の姿を見た。


「華っ、早く着替えないとダメだろ?」

「今から着替えるんだからもう出て行って」


手で隠してもう片方の手で払い仕草をしても佳彦が近付いて私を抱きしめる。


「誘ってるのか?」

「断じて誘ってません!」

「あはは。ママに断られちゃったよ」


佳彦はその場にしゃがみ込んで私のお腹に手を当てて赤ちゃんに話しかけた。


「華、これならお腹にキツく無いだろ」

「う、うん。ありがとう」


佳彦から渡された服はお腹周りゆったりの服だった。

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