80・満面の笑顔で
第80話
「高畑、お陰で助かったよ」
「課長の為ならいつでも力かしますわ」
高畑さんと佳彦が、楽しそうに話してるのを見て胸がズキズキ痛むから目を逸らした。
「課長と高畑さんって付き合ってるって噂ありますけど本当なんですかね?」
「さぁ?噂は噂だしね…」
所詮噂は噂でしかない。
だって課長と結婚してるのは私・沢井華。
「課長に用事が、あるんだけど終わりそうに無いかな?」
「良いんじゃないんですか?横入りしちゃえ」
「そうね。仕事だもんね」
書類を持って課長の側に行くと高畑さんが気付いて佳彦の視線を遮る。
「課長、もっと褒めて下さいよー」
「高畑、よくやったな!」
「野山に言ってない!課長に言ってるの」
高畑さんと野山さんが話してるから位置をずらして課長の後ろに回ると高畑さんが気付き課長の肩に手を回す。
「何だ?高畑」
「褒めてくれないからですよー」
課長と話すのをそんなに阻止させたいのか…と呆れて席に戻ろうとしたら野山さんと目が合った。
「あれ?沢井さん。俺に用事?課長に用事?」
「あっ!」
野山さんが私に気付いてくれて話しかけてくれたから急いで答える。
「課長にです!」
「俺じゃないのかー。残念だわっー」
「あらっ、沢井さん。居たの気付かなかったわ」
「どうした?沢井」
そう言って手を差し伸べたので書類を差し出し、印を貰おうとしたら私の書類を持って課長は自分のデスクに戻ったから慌てて付いて行った。
「すまんな。気付かなくって。どんどん割り込んで来て良いからな」
「……はいっ」
そう言って満面の笑顔で書類を渡されて私の顔は真っ赤になった。
花が咲き誇ってるみたいな佳彦の笑顔が好き。
私を労ってくれてる佳彦が好き。
「ありがとうございます」
恥ずかしくなって慌てて返事はしたけど下を向いて佳彦は野山さんの所に戻るすれ違い様に小声で話して来た。
〈その顔は反則だよ、華〉
「……っ」
佳彦こそ、その笑顔は反則って言いたかったけど私だけに向けられた笑顔は私だけのものに心が躍った。
「野山」
「はい?課長」
私に印をしてから課長はお弁当を持って野山さんの所に行く。
「俺、今から休憩行くから」
「はい。分かりました」
ゆっくりお昼休憩取ってね、佳彦。
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