78・所々で思い出す

第78話

「彼氏と初エッチしたんだけど、肉食系かと思ったら草食だったよ。まぁ、抱き合ってるだけで満足だから良いんだけどね」

「…そうなんだ」


佳彦なんて見た目草食系?いや…見たまんま肉食系よ。

だからエッチだって激しいのよね。

でも、激しいなかにも優しい愛撫してくれるから気持ちよくってこれから仕事って時に…慌てて頭の上を払った。


「何してんの?」

「えっ?何でもない。あははは」


智子と話しながらオフィスに向かうと朝方抱き合った男性の声が聞こえる。


「梨本!次の書類持ってこい」

「はい!課長、ここに…」


なんだかせわしない?

何かトラブルでもあったのかな?


「どうかしたの?」


智子がデスクに座ってる同僚に聞いていた。


「詳しい状況は分からないけど、取引先のご機嫌を損ねたらしいよ」

「うわぁー…。大変だね」

「……」


朝、普通に「行ってらしゃい」って見送ったばかりなのに今は忙しなく働いてる佳彦。


「梨本!これで先方の所に行くぞ」

「はい」


スーツをビシッとして鞄を持ち梨本さんを連れて営業先に向かう方向になった。


「午前は出かける。何かあったら野山に」

「はい」


午前の預かりは野山さんになりこっちに歩いてくるけど佳彦の顔は先方の事しか頭の中に無く目が合わずにすれ違った。


「午前は課長不在かー…。午後も何時になるか…」

「そうだね」


智子と別れて自分のデスクに向かう途中で野山さんに声をかけられて書類を持って椅子に座った。


「…確か、これの見本何処かに…」


書類を見て何処かで見た気がしたからデスクの書類を探してる時にフッと思い出した。


〔沢井さんのファイリングは見やすくて良いな〕

「……!ファイリング!」


ファイルに入ってるナンバーの中をパラパラめくって探して書類と同じのを探して野山さんに渡して次の仕事に取り掛かる。


〔沢井さん、俺と結婚前提で付き合って欲しい〕


仕事中に佳彦のプロポーズが浮かんで来た。

きっと智子に彼氏が出来たからその影響かなって思いながら。


〔俺の両親、テンション高いから引くかもね〕

〔引かなかった?平気?…そう。良かった〕


離婚・・してると思った時は何一つ思い出さなかったのに夫婦・・で居ていいんだと思ったら思い出すって…どれだけ佳彦が好きなんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る