69・気持ちよく送り出しますよ

第69話

「はッ…沢井!」

「はいっ。課長」


廊下で書類を持っていたら後ろから課長に呼び止められた。


「どうかしましたか?」

「野山の件助かったよ。また宜しくな」

「はい。サポート役ですから。…課長?別の件では無いのですか?」


佳彦が声のトーンを下げて小声で言って来た。


〈…華、悟と呑みに行くから〉

「重要案件はそっちでしょ?…二人でですか?」


佳彦の同期だって分かってるけど高畑さんもってなったらモヤモヤする。


「悟と二人きりだよ。心配しなくても平気だよ」

「うん。楽しんで来てね」


これ以上は嫌な気持ちにさせちゃいけない。

男二人・・・で呑むんだもんね!

だから笑って見送らないとね。


「そんなアッサリだと寂しい気もする。平気とは言ったけども…」

「絶対、男二人・・・でお願いしますね」

「了解」


二人で一瞬だけお互いの手を触れて課長は戻って行った。

私は、触れた手がまだ熱い気がして…化粧室に駆け込んだ。


「はあぁぁぁ…」


長い溜息が出て両手で顔を押さえる。


「……」


佳彦と気持ちが通じ合ってからの仕事。

世界が違って見えてキラキラして見える。


「もぉ…恥ずかしいけど気合い入れて頑張ろう!」


パシンッと両頬を叩いて気合いを入れた。


「あらっ、貴女とはよく化粧室で会う事」

「お疲れ様です。高畑さん」


高畑さんと化粧室でまた出会した。

気まずいので早々に化粧室から出ようとしたら話しかけられた。


「…今朝、悟の補助に同行したんですってね」

「あっ、はい。先方からの急の依頼でしたので」


高畑さんも補助役・・・なんだよね。

私が急遽行ったの…気に入らなかった?


「もう出社していたんだけど声をかけられなかったのよね…」

「…そうですか」


先輩に対して失礼かもしれないけど他に言い方があるなら教えて欲しい…。


「だからちょくちょく顔を出すから課長・・に伝えておいてね」

「…はい…」


返事をしてその場を収めた。



「高畑がそんな事を言って来たのか」

「はい。伝えておいてと…の事でしたので」


課に戻って課長の所に行き説明をした。


「商品課の課長に話をつけておく。仕事に支障出たら大変だからな」

「はい」


課長と話が終わって自分の席に戻り目を疑った。


「えっ?何これ…」


書類が積み上がっていた。

朝倉さんだな〜〜っ

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