68・男二人で乾杯〜佳彦目線〜

第68話

「課長」

「上田さん、どうかしたのかな?」


書類に目を通していたら上田さんが声を掛けて来たから顔を上げる。


「沢井さん、野山さんに呼ばれてKYA会社に向かいました」

「そうなんだね。報告ありがとう」


悟が主体となって取り進んでいるKYA会社。

補助として華と高畑を付けた。


「……」


後で報告来るから書類に目を通しておくかと再び視線を書類に向けるけど気になった。


「…長!課長!」

「…呼んだか?」

「はい、何回も。ココに印をお願いします」

「分かった」


印をしたら書類を持って来た部下に言われてしまった。


「課長…そこ部長・・の所です」

「間違えた」


俺、慌てすぎ。

報告来るんだから気になるけど自分の仕事をこなさないといけないな。


「課長、SERさんの吉永様からお電話です」

「繋いでくれ」


俺がウェディングプランを手掛けてる取引先だ。

華の為に…結婚記念日にと…内緒で手掛けてきた事が裏目に出るなんて思いもよらなかった。


「はぁ…」


つい溜息が出てしまった。

離婚・・を切り出されて俺は真っ白になった。

だからもう一度捕まえようとSER会社と提携をする事にした。


「課長?疲れているんですか?」

「少しな…。何だ?サインか?」

「はい。こちらのー」


少し伸びをしてから部下に渡された書類に目を通した。


「これで通してよし。次持って来い」

「はい!俺行きます!」


部下がどんどん持ってくるから目を通していると入り口が騒がしくなったから視線をそちらに移したら野山と華が歩いていた。


「野山さん!KYA会社とのもう一つ取ったみたいよ!」

「凄い!野山さん。カッコいい」


もう一つの案件の件だったのかと思いながら他の部下と話をする。

悟は俺が今忙しい事を承知してるから後で報告が来るだろう。

華の方は俺をチラチラ見てて可愛いしか言葉が出てこない。



「野山、お疲れ」

課長・・、お疲れ様です」


自販機ルームに悟が入ったのを見て声をかけた。


「よくやったな!悟?」

「あぁ。華ちゃんが、上手くフォローしてくれたから無事に進んだよ」

「華のプレゼンも向こうは気に入っていたからな」


お互い珈琲で乾杯した。


「祝いしてやるよ。いつもの居酒屋だな」

「課長〜。俺と二人きりで?」

「たまには良いだろ?」


男二人で乾杯だよ。

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