63・話し合いして…
第63話
「どうしてコレがここに手元にあるの?」
「俺は最初から反対だったのに出す訳ないだろ?」
「……」
ずっと“ソレ”だと思った。
一線を置かないといけないと思った。
「何を気にして書いたか今言えるだろ?」
「……っ」
私をキツく抱きしめてくれる佳彦が顔を見せない様に言ってくるから言いそうに出かかる。
「……言っても引かない?」
「今更、何を言ってんだ?」
「…佳彦が…」
「俺が?何だよ」
目が霞んで頬に流れるのが涙だと知った時、私は言葉に表す。
「俺と離婚しようとした理由は?」
「佳彦が…」
私、もっと佳彦と一緒に生活を続けたかったの。
本当は一人暮らし寂しかったの。
「佳彦が好きな人と…結婚出来ると思ったから」
「俺の好きな人?」
佳彦が顔を上げて私を見てプハッと笑った。
「俺は今、“好きな人”と結婚してる」
「……!!」
好きな人と結婚って…
「だって、あの時そっけなかった。…エッチだって回数が…って言わせないでよ!」
「お前が暴露してるだけだろ?」
二人とも一瞬無言になって笑い合った。
「
「えっ?」
結婚記念日?
だってあれは二人とも日にちが合わないからって言っていたけど嘘だったの?
「俺の手掛けるウェデングプランにしようと前から計画していたんだよ」
「……嘘っ」
なら夜が遅くなっても、コソコソ電話していたのもその為だったの?
「もっと早く言ってくれれば良かったじゃん!」
「言ったらサプライズが台無しだろ。お前、それで
「そうだよ!だから言ってるじゃん!佳彦に好きな人が出来たから潔く身を引こうと思ったから離婚しよって…」
「…それなら話して華の意見も聞けば良かったな」
佳彦が私の頬に触れるから私も手を重ねる。
「私、この手を離さなくても良いって事だよね?」
「あぁ、もう離すなよ。俺も離さないから」
手を絡めてお互い視線が交じり合いどちらともなく顔を近付けてゆっくり瞼を閉じていく。
最後まで佳彦の顔が見たいけど今は甘いキスを噛み締めたい。
「…んっ」
「もっと欲しくなる。この甘い蜜に誘われる」
「佳…彦…」
「その俺だけを見る顔が好きだよ。華」
もっと甘えさせて。
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