58・話そうとすると…

第58話

「補助って言ってもKYA会社は野山のみだ。野山が補佐が欲しいと言った時だけ一緒に行って欲しい」

「悟の補助ね。まぁ、いいわ」

「足りない私ですけど頑張ります!」


野山さんに向かって言ったら野山さんが笑ってくれた。


「華ちゃんも野々もよろしく」

「じゃあ、これから補助の話をするだろ?後は悟、よろしく」


そう言って佳彦は立ち上がった。


「行っちゃうの?佳彦」

「あぁ、他の案件もあるし。俺は基本管轄外になるから」

「……」


佳彦、ノータッチになるんだ。


「じゃあ、野々。華ちゃん、やろうか」

「悟だと気が乗らないけど仕方なくやるわ」

「何から始めますか?」


佳彦はいつの間にかいなくなって居た。

三人で話し合いが始まる。


「……」


私に出来るか?これっ?っていう内容でしたけど指名されたからには全力で取り組ませて頂きます。




「…な。…な」


誰かが遠くで呼んでる気がするけど私はこれを詰めないといけないから呼ばないで。


「沢井華!」

「あっ!はいっ!」


誰かに呼ばれて慌てて立ち上がった。


「??」

「やっと戻って来たか。華」

「?佳彦?」


見回したら佳彦だけ居て周りの同僚達は居なかった。


「華、根を詰めすぎだ。ぶっ倒れるぞ?」

「大丈夫よ。折角、任された案件なのよ?」


笑顔で佳彦に笑いかけたらまた視線を逸らされた事にこれは照れ隠し…と思っても胸は痛む。


「…っ、そうか」

「……そうよ」


二人の間に沈黙が流れるけどまた破ったのは佳彦だった。


「華、お袋達が心配してるから帰るぞ」

「本当?今何時?」

「今、21時」

「えっ?21時?もうそんな時間経っていたの?」


慌てて鞄に書類を入れて支度をしていく。


「佳彦…まさか終わるまで待っていてくれたの?」

「当たり前だろ?一人で帰らせる訳ないだろ?お前声掛けないと深夜までやってそうだしな」

「…本当の事になりそうで何も言えません」


佳彦と二人で隣同士に歩いて行くこの距離感が私には心地良い。


「佳彦、あのね…」

「何だ?」


二人でエレベーターに乗り込む。


離婚・・の件なんだけど…」

「あぁ。何だ?」


離婚を取り消してもらおうと決めた。


「あらっ、佳彦。偶然ね」

高畑お前も今帰りか?」

「高畑さん」


高畑さんが現れて同じエレベーターに乗り込んだ。

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