47・心地よい腕の中に…

第47話

野々・・に邪魔された。何用だった?」

「えっ?なんでもない」


話し合いなんて無用だと感じる。

だって、今も高畑さんの事を名前・・で呼んでる。


「もう、寝るから離してくれる?」

「俺とこのまま寝ようぜ」

「えっ?嫌よ!」


慌てて胸板をグイッーと押したのにビクともしない。


「こんな所、お義父様かお義母様に見られたら…」

「良いじゃん。“仲の良い夫婦演じる”んだろ?」

「……っ」


佳彦の言葉から出てくるなんて思わなくて胸が痛んだ。

自分で散々言って思っているのに佳彦から言われるのは辛い。


「…いいわ。仲の良い夫婦ね!」

「そう来ないとな、華」


優しく名前を呼ばないで。

縋り付いて貴方を求めてしまう。


「じゃあ、奥さん。どうぞ」

「…失礼します」


佳彦に腕枕をされて二人で向き合って寝転がる。


「華、もう少しこっち来いよ」

「えっ?いいよっ!落ちないから」


断ったのに有無を言わさずにグイッと私の腰を引いて佳彦にピッタリとくっついた。


「華、おやすみ」

「…おやすみなさい」


あの時以来の佳彦の腕の中。

布団の中に二人の温もりが混ざり合って温かくなる。


「……」


佳彦の規則正しい心臓の音が私の眠りを誘い瞼が落ちる。


「華、愛してるよ」

「んっ…」


その言葉は私の夢の中が作り出した幻影なのか真実なのか分からないけど今は考えたくない。

この幸せな温もりの中に居させてーーー。



「…な、華!起きろ」

「んっ…後5分…」


誰かの声に起こされるけど布団を被る。


「そうか。父さん達起きて来てそのだらしない格好見せる度胸があるなら良いけど」

「えっ!?お義父様達!?」


慌てて起き上がって自分が何故リビングに居るのか一瞬頭が固まるけどすぐ思い出す。


「大変!!急いで着替えてくるわ」

「慌てるなよ。こけるぞ」

「そんな慌てん坊じゃないわ…きゃあ!」


慌てて立ち上がったらソファーからズレていた布団に滑った。


「華!!」


佳彦が慌てて私の腕を引っ張ってくれたから転ばずに済んだけど案の定怒られた。


「あっー…ビックリした…」

「だから気をつけろ!って言ったんだ」

「ごめんなさい」


お義父様達が起きてきてがパジャマっておかしいでしょー!!


「ありがとう。今度は気をつけるわ」


慌てて布団を抱えて片付けて自分の部屋に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る