43・部長とね…
第43話
〔部長は高畑さんと居て下さい〕
「……」
なーんであんな事言っちゃったんだろう…。
本当は私と一緒に戻って欲しかった。
「私、本当に馬鹿なんだから…」
呟いた声は私しか居ないこの広いオフィスに響く。
「……」
顔を上げて見たのは部長のデスク。
鞄もそのまま置いてあり戻ってくるかこのまま戻って来ないか…分からない人を待ってるのは苦じゃ無いの…だって好きな人だから。
「よしっ!それまで仕事片付けちゃおー!」
再びパチンッと頬を叩いて気合いを入れ直すのだった。
夢の中でパソコンを打つ音がする。
「…起きたか?ねぼすけ華」
「…佳…彦?どうして…ここに?」
目を開けたら佳彦の顔が映るなんてなんて幸せな事なんだろうか。
「お前、また
「だって…置かれていくのよ…。処理しなくちゃ…」
「今度はちゃんと断れ。いいな」
佳彦の手が伸びて私の頭を撫でる。
この佳彦の私の頭を撫でてくれる手が好き。
二人だけの世界に浸っていたいと思う。
「……」
「華?」
「!!」
勢いよく飛び起きた。
「えっ?私…何処から夢で何処から本当?!」
「何だ?どうした?」
隣をソロッーと見たら部長がパソコンを打っていてこれは夢じゃ無いと思った。
「申し訳ありません!私、いつの間にか寝落ち?してしまいました…」
「別にいいよ。俺は華の
「!!」
慌てて口周りを拭いたら部長は笑ったから嘘言ったと思った。
「もぉ!部長!!」
「あははは。しかし華、今度こそ断れよ?」
「あっ…はい」
急に仕事モードに戻るから最初戸惑ったけど今じゃ慣れてる。
「…部長?」
「二人きりだぞ?
「いいえ。部長と呼ばせて頂きます!!」
「じゃあ、こんな事をしてもか?」
「えっ?」
グイッと腕を引っ張られて椅子が佳彦の方に動き腕の中に入る。
「部…!!」
いやっ!他の女性の匂いなんて嗅ぎたく…ない?
「何も匂わない?」
「水で落としてきたからな。まぁ簡単にだけど」
「どうして…?」
どうして…なんて言葉は自分が一番分かってる。
「さぁ、どうしてだろうな」
「……ばか」
その言葉を出すだけで精一杯だったのに佳彦はまた笑って私を抱きしめた。
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