39・ディナーの約束

第39話

「沢井華さん」

「野山さん?どうかしたん…」


野山さんが私の右手を取って私を見つめる。


「俺に付き合って」

「はい」


二人佳彦と高畑さんが見てる前で私は答える。


「悟っ!華!?」

「やったじゃない!悟!」


佳…部長が何故か焦っていて高畑さんは何故か嬉しがってるし、野山さんはキョトンとしてるし。


「華ちゃん…」

「何処まで付き合えば良いですか?」

「えっ?」

「俺“に”付き合うのですよね?」


何処まで付き合えば良いのだろう。

野山さんにはいつもお世話になってるから何処

までだろうか。


「プッ…ディナーをお誘いしても?」

「はい。喜んでお供します」


佳彦と高畑さんは呆気に取られていた。


「えっ?付き合うんじゃないの?」

「悟!ディナーに誘うのは遅い時間にしないでくれよ」

「そんな事、部長に関係ないです」


野山さんが私の肩を抱いて営業課に向かう。


「大人の付き合いだから保証は出来ないよ」

「悟!華!」


私達は二人を置いて営業課に戻って行った。


「じゃあ、華ちゃん。帰りね」

「はい。野山さんも頑張って下さい」


野山さんと別れて自分のデスクに戻り座る。

時間差で怒ってる様に見える佳…部長が戻ってきた。


「部長。ここに印が欲しいので頂けますか?」

「誰宛の書類だ」

「はい。AWE宛です」


静かに印を、押す佳彦を見て怒ってる…と分かったから他のメンバーもその殺気を感じ取る。


「部長…どうしたんだろうね…」

「そうね。智子も部長に渡してくるんでしょ?その書類」

「あっー…。怒りが治ってからにするわ」


智子は書類を持ってそそくさと自分のデスクに戻って行った。


「……」


一つの書類を手に取ってこれは…で手が止まった。


「……」


部長の方を見たら無言で書類の決済をしていた。

アレを邪魔するのは気が引ける…。


〈部長、怒るの珍しいね〜〉

〈本当にね。何があったんだろう?〉


女性社員達が小声で話してる。


〈さっき商品課の高畑さんと言い争っていたからソレが原因?〉

〈あーっ…やっぱり付き合っているんだ…〉


付き合ってる…佳彦と高畑さんが。

私と佳彦が夫婦・・だったなんて天にも地にも思わないだろう。

離婚しちやったけど…。


「沢井!」

「あっ、はい!」


呼ばれたから部長に貰う印鑑の書類を持って向かう。

緊張するわ〜。

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