35・抱きしめてもらうの嬉しいの

第35話

「ちょっ…!!」

「よく頑張ったご褒美だよ、華」


ご褒美で私を前から抱きしめるなんて同情されてるのよね…。


「佳…部長、セクハラですからやめて頂けますか?」

「セクハラって。お前と俺の仲だよ。それに俺は今だに応じて無いし」

「えっ?」

「そんな事より本当によく頑張ったよ。華」


言葉を濁らせた佳彦にそれ以上追求しなかった。

ただこの腕の中があの時以来で…思い出される。


「佳…部長、本当に離して下さると嬉しいですけど?」

「そうだな。想ってる男に誤解されると困るもんな」

「えっ?」


想ってる男?

そんなの佳彦しかいないって…言えたら良いのに言えない。


「そうだ!離婚・・してるの親達に言ってないから今年は帰省はしないからね」

「俺はするよ。だから華も来るんだぞ」

「えっ?はっ?何で?」


佳彦の急な言葉に頭の中が真っ白になった。


「と言うか親がここ3.4日以内にコッチに来るから」

「お義母様とお義父様が?」

「あぁ。連絡あったから華、俺の家に泊まりだから」


待って!待って!急にそんな事言われても困る。


「佳彦、待って!急にそんな事言われても困る!離婚してるのに私、そんな…」

「母さん、お前の事好きなのになぁー…。どうする?」

「〜〜!!」


それを言われたらズルイ!!

私も佳彦のお義母様は大好きだからお義母様を出されたら行くべきじゃないの!


「分かったわ。泊まるし、行く。お義母様達が帰ったら私も帰るから」

「…それまで家があるといいなぁー」

「なにそれ」


お義母様達が帰ったら私も帰るわよ!

離婚・・してるのに居たらおかしいもの。


「部長、後は私が片付けますから離してくれますか?」

「残念。このままでも良かったのに」


佳彦の腕の中に入ったまま話をしていた。


「華、プレゼン明日の朝イチからだから」

「はい。分かりました」


頭をポンッと優しく撫でられて佳彦は会議室から出て行き一人になった。


「はぁぁぉぁー…。ドキドキした……」


佳彦に後ろから前から抱きしめられた時冷静を装っていたけど本当は心臓バクバクしていた。

手が震えているから息を吐きかける。


「あの時以来の腕の中…?待って、違う!佳彦が酔った時以来であれから何日か経ってる」


抱きしめられるのって改めて嬉しいよ。

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