18・取引先のお婆ちゃん
第18話
自分が何処が悪いのか分からない。
佳彦は
「華ちゃん?どうかしたのかい?」
「あっ、ごめんなさい。それでですね…」
「色々大変でしょ。冷たいお茶だよ」
「…ありがとうございます」
私を『華ちゃん』と可愛がってくれる取引先でもある山崎さんという80代のお婆ちゃんが一人で切り盛りしてる所にお邪魔していて冷たいお茶をご馳走になる。
「美味しいです!冷たくて気持ちいい」
「そりゃあ、良かったよ。顔色も悪そうだったから心配していたよ」
顔色悪いか…。
出しちゃいけないのに、失格な営業マンね。
「新しい環境に慣れてる最中なのでそれに適応する為奮闘中です」
「辞めちまうのかい?」
「辞めませんよ。山崎さんのお茶飲みにまた来る楽しみ減っちゃいます」
「そうかい、そうかい。嬉しい事言ってくれるね。TRY会社と提携するよりよっぽど良い」
「TRY会社?山崎さんもう少し詳しくお話し頂けませんか?」
TRY会社が山崎さんの持ってる商標が欲しいらしく無理矢理提携しようとしてくる…と言っており山崎さんは断固と拒否してるらしいのだけどTRY会社も諦めず…。
ウチみたいな大きい会社の傘下に入ってる山崎さんの会社から手を出そうとしてるなんて…。
「沢井、ここに居たのか」
「部長!どうしてここに?」
山崎さんの所から出て会社に戻る為歩いていたら部長に会ってビックリした。
「山崎さんの冷たいお茶が飲みたくなって来た」
「…そうですか。美味しいですよね」
「…あぁ」
何を話して良いか分からない。
先程、避けられて心はまだ傷付いてそれをきっと佳彦は気付いてない。
「何かあった?」
「……っ」
『何かあった?』…ありましたよ!えぇ、ありましたよ!!
「…山崎さんがTRY会社の勧誘に嫌気がさしてるそうです」
「…TRY会社?」
口から出た言葉は自分の思ってる感情じゃなくて仕事の感情を優先させた。
それが大人として会社人としての礼儀。
「TRY会社か。抗議の連絡を入れる。他は何か言ってなかったか?」
「これと言って別に」
山崎さんにこれ以上被害がなければ良いです。
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