14・部屋はそのままだった

第14話

「佳ッ…部長!私、着替えに…」


急いでキッチンに行ったらイイ匂いが私を誘う。


「食べろ。二日酔いに効く食い物用意したから」

「あっ…はい。ありがとうございます」


逆らえず大人しく椅子を引いて座ると佳彦はもう食べてる途中だった。


「いただきます」

「どうぞ。食べやすいのにした」


朝はいつもムカムカしてるのに今日はしない。

佳彦の久しぶりの朝食に気分がたかぶる。


「いつも作ってくれていてありがとう」

「どうした?急に…」

「…別に。言いたくなったのよ」


結婚してる時は『ありがとう』の言葉すら出て来なかった。

いつも起きると朝食・・が用意されていて私はそれを何も言わずに食べて出社していた。


「朝食、食いにくるならいつでもどうぞ」

「そう言う訳には行かないでしょ」


離婚・・したんだもん。

いつでもホイホイこれる間柄じゃない。


「華、今日のクラントは…」

「はい」


私生活からガラリと仕事の顔になるこの瞬間の

佳彦の顔が好き。

普段通りの顔も好き。

離婚してから気付くなんて馬鹿だなぁー…私。

…って昨日の私はヘマしてないよねっ??


「美味しいか?」

「はい。美味しい」


聞けない…。

この雰囲気を壊したくないけど聞かないと!!


「…昨日の私…やらかした…?」

「あぁ、ベロベロに…なっ…」


あぁー!!私のバカ!!

胃のムカムカと戦ってる最中なのに!!

まぁ、頭痛いのとまだ酔いが回っているのは否めないのは自業自得。


「服なら華の部屋にまだ置いてある。シャワー浴びて出社すれば良いだろ?」

「私の部屋?まだあるの?」

「…あぁ。まだそのまま」


離婚してまだそんなに経ってないけど未だに私の部屋があるのがビックリ。

佳彦、すぐ片付けちゃうからもう無いと思っていた。


「ありがとう」

「別に。片付けるのが面倒臭いからそのままだけだ」

「……そう」


そうよね。元妻・・の物なんて片付けるの面倒臭いよね。


「休みの時に片付けに来るわ。勿論、佳彦が居る時でいいから」

「別に片付けなくて良いよ」

「何で?」

「…また潰れたら俺の家に来るだろ?」

「!!」


何、その理由!

ムカつくけど否めない。

これでまた佳彦の家に来れる理由が…ってバカ!


「着替えるわ!ご馳走様でした」

「はいよ」


立ち上がり自分の部屋に向かう為、部屋を出て行った。

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